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2021 / 03
Philosophy
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Original SIN Architecture
人間やAIは、意思決定をすることでエントロピーを減らすことができる機械であるといえる。
しかしそんな意思力のおかげで、世の中には作品も、感情も、生命も溢れかえっている。かえって乱雑になっているようにすら感じる。
モノを作るのは罪なことだと思った。ものづくりとは、何もせずとも流転していく世界へ、反旗をひるがえす行為なのだ。
SINという文字列は、シンと読めば罪という英単語になる。Original SINとは原罪、アダムとイヴが知恵の木の実を食べてしまったことを意味する。
モノを作ることへの懐疑的な意味を込めた。
音響学には、重ね合わせの理論というものがある。
SINという文字列をサインと読むと、誰しも聞いたことがある、サイン・コサイン・タンジェントのサインを連想させるかと思う。
全ての音は、基本音と倍音で構成される。サイン波には倍音がない。サイン波と聞いてピンとこない人もいるかと思うので、以下に音源を掲載した。
反対に倍音が大量にある音は、一般的にホワイトノイズと呼ばれる。「ザー」という、ラジオやアナログテレビの砂嵐の音である。高い音から低い音までが同時に鳴りすぎて、ある音程として評価できない音が鳴っているのだ。
では、ホワイトノイズとサイン波という全く異なる音は、全く異なる性質の上に成り立っているかというと、そうではない。あるホワイトノイズにおいて、たとえば、20Hzから20000Hzまでの全ての音域の音が鳴っているとする。それは、20Hzから20000Hzまでの全ての周波数でサイン波を鳴らせば再現できるものだ。
このように、世の中にある全ての音はサイン波で表現できる。
ピアノの音も、太鼓の音も、あなたの声も。
サイン波のような、「すべての原型」を組み合わせながらデザインを設計していきたいという意志を込めた。
完璧なサイン波を鳴らすことは不可能である。
スピーカーで鳴らせば、スピーカー自体がブルブルと震える音が加わり、倍音がなってしまう。当然ヘッドホンやイヤホンでも同様である。
そもそも、デジタル上で音を扱う場合、サンプリングレートという概念に縛られざるを得ない。0と1しか扱えないデジタル機器には、サイン波のような連続的「波」も、ガタガタとした擬似的なかたちでしか表現できないのだ。
そう、Original(≒ 原本・実物)SIN、完璧なサインは虚構のものだ。
ユートピアと同じく、存在することができないからこそ、つねに目指す価値が失われない。
完璧なものづくりはあり得ないという意味を込めた。
あなたが赤い絵具を用いて絵を描いたとき、それは赤という色を模倣している行為である。
我々が木の絵を描けるのは、視覚から得た「木」というすがたかたちを模倣しているからであり、模倣なしにクリエイティブは存在しない。
そんな中、あえて"Original" SINと名乗ることで、クリエイティブにオリジナルは存在しないという意味を込めた。
ものづくりをする事業主の屋号として、これほどものづくりへの皮肉をこめた最後の理由である。
僕はものづくりをやめられない。経営者の友人は、僕のことを「職人」だと言った。
お金がないと作り続けられないので、当然お金は稼ぐ。でもそれより、世の中により美しく、より優しく、よりこだわりを持ったプロダクトを生み出す手伝いをすることが、僕の生きがいである。
たとえ自分のクリエイションが、人類の数千年の歴史の中で瞬き、刹那に消えてしまうものだったとしても、完全なオリジナルなんてないとしても、その悔しさを足場に、作ることをやめない。
それこそ、意味を前述したOriginal SINのあとに、「Architecture」を付け足した理由である。
それが罪だと思えたとしても、オリジナルでない悔しさを胸にしても、その葛藤すらクリエイションの中に昇華し超越する。
クリエイティブを愚直に信じていないからこそ、より美しく、より優しく、こだわりのあるクリエイションを設計(=アーキテクチャ)するという覚悟を込めた。
Original SIN Architecture is design studio based in Tokyo. Shaping your attention, phillosophy, identity with Logo & CI & Web & DTP Design + Web Development.
Original SIN Architectureをよろしくお願いいたします。